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【横浜店】DENON AVC-A1Hの「感想」について書かせて頂きます。


横浜店 渡邉です。

さて、DENON、Marantzの両メーカーからド級アンプが発売されました。
「旗艦」アンプであるDENON AVC-A1Hとセパレートアンプの最高峰モデルプリアンプのAV10と16CHパワーアンプのamp10です。
それぞれ、発売当初のブログはこちら。

【横浜店】DENON AVC-A1H DENONのフラッグシップアンプが発表です!AVアンプでできる事すべてを網羅したモンスターを超えた「旗艦アンプ」です。
https://corp.avac.co.jp/shopblog/archives/yokohama/20230215


【横浜店】Marantz AV10/AMP10情報解禁です!現時点で最も贅沢に作りこまれた15.4chAVプリアンプとパワーアンプとなります。
https://corp.avac.co.jp/shopblog/archives/yokohama/20230214

発売から少し時間が経過しており、腰を据えて機種のご紹介と感想を書かせていただこうと思っていたのですが、なかなか時間もなく対応できませんでした。
そんなわけで今回はDENON AVC-A1HについてAVC-A110のブログや当時の思い、AVC-X8500H品切れと8500HAへの切り替え当時の状況、そして現行機であるAVC-X8500HAを聴きながら書かせて頂きます。

まず大前提としてAVC-A1HはAVC-X8500HやAVC-X8500HA、そしてAVC-A110のすべてを踏まえて作り出されており、ここまでの機種とはベースが違います。
ここでいう「踏まえて」と言う言い方は「内包した」と言い変えることもできるかと思います。

実際、AVC-A1Hはパッと見AVC-X8500H系と同じ様に見えるのですが、実際には既存の物を使うという形ではありません。
ハードウェア的には「初めから」AVC-A110以上の電源ユニット、コンデンサ、基板をすべてそろえており、DACについても「初めから」ESS製になっています。
この写真はD&Mでの内覧会の写真ですが、下のトランスに至ってはこれだけで11kgもあり「持ち出せるものなら」と言わんばかりの重さです。

音のベースとなるDACは旭化成のAKとは明らかに音の性格がやはり「初めから」変わっています。
一般的な意見と変わりないのですが、両者を比較するとESSの方がくっきりはっきりしており、今回のAVC-A1HはESSである事を踏まえて音作りがされております。
結局、AVC-A1Hは「ハードウェアの下地」が元から違うわけです。
AVC-A1HはこのハードウェアにAVC-X8500HやAVC-X8500HAの持つそれぞれの「音色」や「中高音の押出し感」だけではなく、AVC-A110で付与された「豊かな音の厚み」や「繊細さ」そして「音にまとわりつく残響の膨らみ」や「オブジェクトオーディオの大きさ」も含め、すべての要素を特殊なチューニングや機器の変更も必要とせず「AVC-A1Hの流儀」で内包する事が出来ています。

さて、このような前提を踏まえて実際の音について書かせて頂きます。
今回はあえてB&WはなくKEFで組んでいます。
フロントのReference3 METAはBi-Amp接続

センターはReference2c Meta

サラウンドはR5、サラウンドバックはR3 でベースレイヤーを組んでいます。

ミドルレイヤーはPiega AP1.2のフロントハイト・リアハイトにAHT525IWでトップミドルを組んだ6ch。

サブウーファーはReference8bの組み合わせです。

この組み合わせではチャンネル数が7.1.6の13Chとなり、Front Bi-ampで15chとなります。
イベント時はフロントワイドで組んでいたのですが、今回はフロント2chをBI-AMPとし、より一番現実的な組み合わせとしています。

実際に聞き始めて最初に思う事としては「音成分の分解能」が高い事です。
言い方を変えれば「解像度感が高くきめの細かい音」と言うところでしょうか。
これはどの音域でも言える部分であり、細かい部分まで音の輪郭を拾って表現しています。
このような感想はB&Wではよく出てくるものなのですが、REFERENCEとはいえKEFになりますので広がる音の中で繊細さを感じるところにアンプ自体の能力を感じます。
高音部はキメの細かさが全面に出てくる一方、高音域の下から中音域にかけて徐々に「音の質量」が増してきます。
最後に低音部は、巨大な質量の重低音が重なる「DENONのAVCらしい」全体のスケールを進化させたような印象でもはやサブウーファーいらずのレベルに達します。
また、実際の運用ではこれだけではないさらに有り余る「駆動力」を感じる事もありました。
これはAVC-A110やAVC-X8500HAではなかった事なのですが、音量が大きくなればなるほど低音の押し出しが大きくなり、結果的に高音部分が埋没してしまう部分が出てくる……ので、さらに音量を上げてツィーターを震わせる、としている間に音量は-10db以下になっており、それでいて嫌味がない音のままである事が多々がありました。
それゆえ繊細さと中低音のパワー感、音の厚みや残響感を持ちつつ、すっきりとした音になっているのだと思います。

次にイマーシブオーディオの「密度」が上がった感じを持ちました。
この辺りはスピーカーの配置システムとシステムの対応幅が広がった事が理由かと思います。
実は、今までのDENON・Marantz製AVアンプの場合、スピーカーシステムの選択で「トップフロント」「トップリア」「トップミドル」を使用した場合、対応音響システムとして「Auro3D」は表示されませんでした。

この辺りは使用方法も絡んでおり、縦横高さの三軸に対して瞬間的な音を打ち出すことが前提の「オブジェクト型システム」であるDolbyatomsやDTS:Xに対して、指向性の大きいチャネル型のシステムであるAuro3Dの場合、指向性やシステム的に対応のしようがなかったという理由からです。
結果として私は今までDolbyatomsのルールブックを参考に頭頂部からそれぞれ30°の角度であればDolbyのルールとAuro3Dの配置角度の両方に概ね合致出来る事から「フロントハイト+リアハイト」の4本構成をお勧めしておりました。
これに対し、今回のAVC-A1Hからはおそらく「厳密なAuro3Dを実現」と言うわけにはいかないと思いますが「比較的Dolby Atoms寄りのスピーカーシステムでもAuro3Dにも対応」のシステムを選ぶ事も出来る様になりました。
Auro3Dについてはより本物を求める皆様からいろいろとご意見がある事も承知しておりますが、ここはあえて「せっかくスピーカーを揃えているのファーマットに対応しない」と言う方々に対して今回の対応でより柔軟性が増したものと考えてもよいと思います。
(逆にAuro3D寄りのシステムであればDolbyAtomsへの対応は比較的容易です)

いろいろと書き綴っておりますが
「じゃあ、結局どんな音なんだ?」と言うお話になるかと思います。
個人的な回答としてはAVR-4520など(7200の軽さは感じません)少し前に発売されていた「DENON王道の音色」だと思います。

この辺りはAVC-X8500HAやAVC-A110などと同じAB級アンプを用いたシステム構成が変わらないことが主因かと思いますが、実際に試聴をすると頭にこびりついている「DENONの音」という大枠をそのまま感じます。
AVC-A1HはDENONらしい中低音の押出はそのまま、高音部分はAVC-A110の方向性とは違う「繊細さ」や「密度の高さ」と言うより「音の成分がぎっしり詰まっていることを感じられる」印象を持ちました。
ただ、それ故、なんとなく最初の印象で「ん?なんか8500と同じ?」と思う部分が出てしまうのが弱点に感じるかもしれません……。
尤も、もう少し聞くと底力の差が圧倒的でありながら、一つ一つの音のきめ細かさが段違いなことが分かり「あ、これは全く別物だ」と感じるようになりますが。

そしてお問い合わせの多いAVC-A110やAVC-X8500HAの比較ですが(近日実機で行います

まずAVC-A110とAVC-A1Hはベースの機種が違うというところもありますが、完全に性格の違うアンプです。

AVC-A110はAVC-X8500H(HAではなく旭化成AK4490DACであるHモデル)をベースに、110周年と言うマイルストーンの中で費用制限を取っ払い、とことん「DENONの音、結果的にDENONピュアオーディオ」な電源系のチューニングを行った機材です。
考え方としては「既存の機種の機能を限界まで引き上げたチューンドアンプ」と言うところでしょうか。
実機の音についてですが、当時のブログを見返してみると結果的にパワーサプライ関係のチューニングが全体的な音の底上げに成功しています。
パワーサプライの向上は最初に瞬間的なパワー感を増すことに成功し、そこから響くAK4490の「ベルベットサウンド」は単体だけでなく13chのオブジェクトで鳴らした場合でも、メインのベースレイヤー音だけでなく周囲に付随する残響音がピュアオ-ディオの様に厚みを持たせつつ滑らかに響き、オブジェクトでありながら連続した「音」そのものがオブジェクトとして動くようになりました。
AVC-X8500HAが持つモリモリのパワー感と処理能力の向上によるハイレゾ系の音色がベースですが、AVC-A110は「音の分解能」上がって荒々しさが収まりつつきめの細かさが加わり、そこにまたパワー感が重なって最後にアナログAB級アンプらしい丸さが少し入りつつ音が消えて行く……いうところでしょうか。
当時は「まるでピュアオーディオで13ch鳴らしているような質感」「残響音の伸びが良くなった」「オブジェクトオーディオで『オブジェクトが動く』ではなくオブジェクト自体が連続しているよう」
こんな感想を書いておりますが、今思えばAVC-X8500Hのパワー感と旭化成のDACの音色、そしてAB級らしい音色双方の良さがパワーサプライのチューニングで重層的に重なり、全体の質量を上げてきたという印象です。

次にAVC-X8500Hとの比較ですが、こちらはAVC-X8500HAとは別に考えます。
AVC-X8500Hは発売当初のDACを搭載した状況であり、実質的にAVC-A110の母体になる機種です。
実はこの機種、音としては過去のDENONの音でありながら中低音の押出が強い音色となっています。
どちらかと言えば既存のアンプに比べ荒々しさと野性味を帯びた「マッチョ」なパワー感を押し出している、そんな機種でした。
13chというチャンネル数もあり「モンスターアンプ」というあだ名のようなものは現在でも十分パワフルであり、古さを感じさせません。
JBLでもB&Wの802DIAMONDでもしっかり鳴らしていたことを覚えていますが、既存のDENONアンプに比べ「粗削り」な部分を感じていたこともまた事実です。

最後にAVC-X8500HAとの比較ですが、この機種いろいろな事情でDACがESSに変更され、音色が変わっています。
中低音の押出はさほど変わりませんでしたが、高音部の音色はパイオニアのSC-LX系の様な透明感のある澄んだ音になりました。
実感としては高音の澄み切った音の後重さより抜けの良い中音……ののちガツンとスピーカーのウーファー部が直接鳴る様な低音が響きます。
同じESS系であるYAMAHAのRX-A8Aも部分的に似たような音になりますが、高音部の伸びが全く違いいます。
その他HDMI基盤8K対応が標準化(AVC-X8500Hはサービスセンターへの郵送による有償オプション)などの変更もあり、実質的に元のAVC-X8500Hとは別の商品となっています。
なお、AVC-A110はこのアンプの印象から変化をレビューしており、今をしてみればAVC-X8500Hはもう少し音色が柔らかいのかなと思います。
各アンプの「総括」としてはこのような所でしょうか。

 

いろいろ感想を書かせて頂きましたが、結果としてAVC-A1HはDENONアンプらしさは残しつつ、前身となるAVC-X8500HAやAVC-X8500H、そして音質的なターゲットとなるAVC-A110の良い所を「内包」しつつ拡張した「旗艦」アンプとしての機能をもっていると言う事になります。
最後に実際の導入についてですが、最初にご注意いただきたいのは大きさと重量です。
大きさの面では434x196x498 mmと幅と高さは変わりませんが奥行きが+60mmとなりますので、ラックへの収まりを考える必要があります。
また、本体重量は32kgと簡単に持ち上がるものではなく、機種の入れ替えは容易とは言えません。
なお、AVR-4520やAVR-7200Wなどと同様に機種更新の対象となるDENON AVC-A1H「D」ですが

AVC-A1HD https://www.denon.jp/ja-jp/shop/DenonApac-avreceiver_ap/avca1hd_ap
● 外形寸法(フット、端子、つまみ含む)/W434×H214×D485mm(ロッドアンテナ含まず)、W434×H277×D509.1mm(ロッドアンテナ含む)
● 質量/27.5kg(信じがたいのですがこっちの方が軽いんです……)
もう一つ、更新対象になりうるSC-LX90

SC-LX90 https://jp.pioneer-audiovisual.com/components/avamp/lx90/productinformation.html
重量は35.5kgでこちらの方が重くなります。
出力的にもよい機材なのですが、新生パイオニアでは修理対象に入っておりませんので更新対象です。
いずれにせよ導入から10年以上の年月が経っており、身体の切れは以前と違います。
腰に注意が必要です。


他にはAV8805+パワーアンプやCX-A5000+MX-A5000系の機材、PRIMARE、Nuforceも対象になるかと思います。
正直な所価格が安い機材とは言えませんが、Dolby Atomsの9.1.6ch実行可能な最大チャンネルシステム構築と考えた場合AV10+AMP10ほどの金額を出さなくてよい事、AV10+AMP10のClass:Dらしい音とは別の物を求められる方、何より「DENONの音」を求められる方で、上位のスピーカーを最上位を狙う方にはお勧めです。

さて、現在店舗ではAVC-A1HとMarantzのAV10とAMP10のコンビの両方を準備しており、ゴールデンウイーク期間中は804D4とHTM81D4、リアに805D4という何とも贅沢なシステムを用意しました。
センタースピーカーはHTM71S3とは大人と子供ぐらいの違いがあります。
ご試聴については機材の差し替えが大変(15ch!)と言う事もありますので、事前のご連絡をお待ちしております。
では、ご連絡をお待ちしております。

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