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【横浜店】放送の未来「放送システム委員会報告」から「将来の電波放送」についてちょっとだけ。

横浜店 渡邉です。
渡邉

さて、今回は7月18日に総務省「放送システム委員会」から発表された「放送システム委員会」の報告をちょっと書こうと思います。

放送システム委員会報告 概要
https://www.soumu.go.jp/main_content/000892615.pdf
なお、元文書は667ページもありますので概要版をお勧めします。
放送システム委員会 答申報告
https://www.soumu.go.jp/main_content/000879678.pdf

内容としては「放送システムに関する技術的条件」と書かれておりますが、要は「今後の地上波デジタル放送」に関しての報告と提言です。
今までの憶測とは違い、ある程度具体的な形で「提言」されておりますので、おそらくここ10年ぐらいで具体的に動き始めると思われます。

えー!とお思いになる方も多いかと思います。
それでも経過期間は長めかと思いますが、最終的には所謂「地デジ、もう一回」になるかと思います。

実は日本で地上波デジタル放送が始まってすでに約19年(BSは23年)の時間が経過しています。

アナログ放送からデジタル放送までの時間が50年かかっていたことを考えると12年なんてと思うかもしれませんが、ここ最近の技術向上スピードは目覚ましく2世代から3世代分の変化が起こっています。
特に放送波に頼る事のない各種配信関係の進歩はCovid-19という災厄もあって進歩が目覚ましく、逆にすぐに必要のない技術への著しい停滞の両方が発生しています。

そんな中、今後策定される「新方式(LL)」は単に地上波の新方式と言うだけでなく、コンテンツレベルでBSやCATVとの映像・音声パッケージ共通化を実現し、伝送方式もMMT・TLV形式を用いる事で放送波だけでなくLANなど複数の伝送媒体を併用する事になります。
答申の主軸はインフラとしての役割を持つ地上波デジタルの次世代(地上波4K)放送に変化させ、電波資源の有効活用を図る事が最大の目的ですが、今回の答申では現在の地上波デジタル放送のシステムは守りつつ、時間を掛けて新しい方式に変化させてゆくという提案を行っています。

と、ここまでが答申の主な内容です。

ここからは個人的な感想です。
今回の答申はいろいろな意味合いを含みますが、冷静に見てゆくと基本的に「これまでの経緯や実証実験」を踏まえた結果です。

参考:地上デジタルテレビジョン方式の高度化に関する総務省委託研究成果等について
https://www.soumu.go.jp/main_content/000693895.pdf

内容を見て頂くと地上波デジタルの高度化目的で4K・8Kの伝送実験は試験的に行われており、結果は出ています。

・新方式は既存の映像処理システムでの受信は不可。
・地上波の高度化は可能だが、現状の周波数帯を割り当てる事は難しい。受信環境の高度化(伝送方法)に工夫が必要。
・受信環境の高度化は2プラン実行され、現行環境下で水平・垂直両偏波を使用する方法と同一チャンネル内で現行放送と高度化放送を「階層分割多重(LDM)技術」を用いて同一チャンネルで伝送する方法を試験。

・水平・垂直偏波を使用する方法は放送設備の改修の必要があり、階層分割多重では強力なエラー訂正とH266 VVCを用いた高圧縮フォーマットが必要。
・8Kの地上波については実験は行われたが結果の答申がほとんどなく、おそらく相当困難

ここまで見て頂くと今回の答申は各種試験の結果を踏まえた「現実的手順に至る答申」である事が分かります。
逆に言えば新放送方式が確定すれば、後は実行のみの段階に入っているわけです。
今の所、現在の日本などが採用している「ISDB-T」方式の延長線上で考えているようですが、高精度デジタルビジョン方式は世界に複数あり、この辺りはまだ流動的です……が日本が採用しているISDB-Tもそれなりのシェアであり、このまま進めるんじゃないかと思います。

(実際の所、放送方式の違いは大きくなく、受信機のソフトウェア的な処理で各方式を賄えますので何とでもなったりします)

今後の流れですが、今回の答申は地上波の高度化と配信等への融合を優先させ、既存の放送をそのまま守りつつ新方式への移行を始める事を優先しています。
それでもこの辺りはおそらく「地上波アナログから地上波デジタルへの移行」と同じぐらいの時間+αとなるかと思いますので、現在の地上波デジタルの停波は、おそらく新方式での放送開始から10年ぐらいはかかるのでないでしょうか。

各機材で想定される事として「個人的な見解」は下記の通りです。

・まずアンテナ関係ですが

今回の「高度化」は現時点では送信側で同一周波数での多重化を行う前提の為、送信を行う地上波アンテナ関係の周波数そのものは変わりません。
このことから受信側でアンテナ関係の機材の買い替えは必要なしですが、放送波伝送にMMT・TLVを採用する為、新方式の受信を行うには受信機側(テレビ・BDレコーダーなど)にLANやWi-Fiが必須になります。

・次にテレビについて

数年後の段階で「地上波4K」対応が始まる事が想定されますが、今回は解像度の変化やHDRやBt2020などの色領域に変化がありませんので、新放送対応チューナー+LANの追加でフル機能に対応可能かと思います。
それでも面倒なので機器の寿命に応じて買い替えになりますかね……。

・プロジェクターは

……あくまで受像機なので現状からの変化はストリーミングデバイス(GoogleTV)などを搭載していないハイエンド機種には影響はほとんどありません。
映像送信器側の更新のみで対応可能です。

中位以下のAndoroidTVやGoogleTV、または独自OSを採用している機材はチップレベルの更新が必要になります。
但し、新方式の放送波を受信しなければ変化はなく、受信をしたいのであれば単純に外部に対応受信システムをつけるのが簡単です。
どちらにせよ数年先のお話になりますので、そこまでに機材の買い替えは必要になるかと思います。

・次にプロジェクターに絡んだ部分としてBDレコーダーになりますが、こちらは中間状態の段階で買い替えが必須になります。
が、コンテンツの共通化とストリーミング化がなされる未来、果たしてガラパゴスなBDレコーダーがどこまで残るのかどうか。
機能的にはH266 VVC対応の機材+LAN(MMT・TLV)を追加する事で移行可能です。

・FirestickやAppleTV 4Kなどストリーミングデバイス

こちらはH264・H265など既存のフォーマットで4K・HDRは対応可能ですので、基本的にそのままです。
ただし機材の性格として新方式放送のH266 VVCへの対応はなされる事が想定されます。
また、元々通信環境が動作の前提になりますので、H266 VVCへの対応がなされた場合、コンテンツの共通化・受信方法の多様化の進み具合とNHKのIP放送とTVerなどの更新によってはMMT・TLVの要件も組み込んで新方式放送波の同一時間受信も可能になるかもしれません。

・同一の理由でスマートフォンやタブレットについても新方式の受信は無線環境や遅延の条件付きで4K受信が可能になるものと思われます。
なお、今回は4K以下のディスプレイではダウンコンバートを用いて受信可能になるかと思います。
ただ、CPU・GPUの処理が厳しくなりますので使用できる機材は限られ、お値段はまた上がりそうですね……。
変わった見方になりますがSteam対応のゲーム端末で新方式放送を見るなんてことが出来るかもしれません。

最後に共通項が多いので後に回しましたが音声についてですが

方向性としてはMPEG-H 3D Audioを軸にDolbyatomsも対応になるかなと思います。
これは通常の受信機やモバイルデバイスの双方で対応が容易である事、標本化周波数が48Khz・16Bitで既存の音声要件の最低ラインを満たしている事、最大56chまで拡張可能である事が理由です。
DolbyatomsについてはAppleの「空間オーディオ」やAmazon Musicなどで海外を中心に事実上の標準規格化されている事、圧縮であればデバイスの性能で品質が左右されない事もあり、結果として内包されることになると考えています。

他方、eARCについてはもともとDolbyatomsやDTS:Xをパッケージと同じレベルでストリーミングに乗せる事を念頭に置いていましたが、配信の対象が必ずしもフル対応でなくてはいけないという状況でもない中、機能はともかく品質についてはさほど浸透しておりません。
この辺はなんとなくですがDolbyやDTS(AuroやIMAX)がMPEG-H 3DAudioをベースラインとして拡張した新しいフォーマットを追加して来るんじゃないかと思っています。

・最後に8Kですが、この辺りは新方式の放送方法が決まっていく段階でH266 VVCの「新BS-8K」にモデルチェンジになるかと思います。

少なくとも地上波の8Kはなく、BSの帯域自体はそのまま、逆にIP放送では可能性があるかなと言うのが率直な感想ですが、8Kネイティブは相変わらずネイティブのテレビまたは8K対応プロジェクターでの視聴(単独のチューナーが出てくる可能性が高く、これはアドバンテージです)、それ以外の機材は新放送方式からはおそらくダウンコンバートの配信(現状8K普及最大の懸案です)も可能となり、8K受信不可の機材でも4KまたはHDで見る事が出来るようになるのではないかと思います。

概ねこんなところでしょうか。
押さえておく点としては
・このお話は最低でも数年先であり、現在の機材購入には全く支障がない
・仮に現在の機種であっても新方式の地上波4Kは機材の追加により以前の地デジ化で変化していた解像度や色域を含むフル機能に概ね対応が出来る。

大事なポイントです。今回の変更は以前の地デジやBS4K・BS8Kの様な解像度や色域ほどの大きな変化はなく、概ね4K・HDRが最大になっていますので最悪新放送のチューナーを導入する事でおおむねの質を確保する事が出来ます。
・おそらく単体のチューナーが販売されます。
新・地上波放送用のチューナーが発売されます。できれば新・BS(8Kも含む?)を出して頂きたいものです。
・新放送方式の受信機材にはおそらくネットワーク回線が必須になる。

と言う所だと思います。
正直、未来の予測と言うのは仲なかなか難しいのですが、今回の答申については今までの積み重ねを現実的な部分に落とし込む内容である事から、ある程度将来を予測できるものでした。
この先どうなるかはわからない部分もありますが、機材購入の計画などに役立てば幸いです。

ご相談等あればメールなどでご連絡ください。
可能な範囲で対応させて頂きます。

それではご連絡・ご予約をお待ちしております。

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